◆初午と稲荷信仰、京都・伏見稲荷大社(一)

2007年02月05日

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 00:58 │Comments( 0 ) 神社に見る日本文化考
◆初午と稲荷信仰、京都・伏見稲荷大社(一)


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◆◇◆初午(はつうま)と稲荷信仰、京都・伏見稲荷大社

 二月に入って最初の午の日を初午(又は初午詣り)といい、お稲荷さん(稲荷神)の祭りが行われる(旧暦で行う所も多くある)。本来は、陽射しに春を感じ、ようやく農作業も始まろうという旧暦の二月最初の午の日に行われる。

 この時期は厳冬から春に季節が移り変わり、陽気は一段と盛んになる。生気は躍動し、草木を始め万物が活動を始める時期だったのだ。その陽気が一番盛んになる旧暦二月の午の日が本来の初午の日に当たる(暦の変更は、このように祭りや行事の季節感をなくしてしまった)。

 古来より初午の頃から農家では五穀をはじめさまざまな種を用意して、農作業が始められる。一陽来復と全てのものの蘇り、そして作物の豊饒を願う神事が初午祭なのである。

 もともと農耕の神であったお稲荷さん(稲荷神)は、後に商売繁盛、病気平癒、招福などに御利益があるとされて広く信仰を集めるようになった。

 お稲荷さん(稲荷神)といえば、京都伏見の伏見稲荷大社が総本社である。初午の日をお稲荷さん(稲荷神)の祭りとしたのも、祭神がこの地に降臨したのが二月の初午の日だったからという(『山城国風土記』逸文に記された、和銅四年=七一一年二月初午の日に、稲荷神が稲荷山三ケ峰に鎮座したという由緒による)。

 しかし、学者によっては稲荷が農業に関係する神様なので、農耕に使用する馬、つまり午の日を祭日として選んだという説を唱える人もいる。

 二月初午の由来については他にも、ちょうどこの頃、田の神が山から降りてくると考えられ、田の神を祭る重要な日とされていた。春に山の神が降りてきて田の神となり、秋には山に帰っていくという全国的に存在する民間の信仰と結びついた「山の神迎え」が初午へと定着していったともされている。つまり、初午とは春の農作の豊年を祈る祭りだったのである。

 京都・伏見稲荷大社の初午大祭は、「初午詣」を「福参り」とも呼び、前日の巳の日から伏見稲荷大社は参拝者で埋まる。社頭で参拝者に授与される「験(しるし)の杉」は、平安時代から和歌にも詠まれ、今日もなお商売繁盛・家内安全の験(しるし)として、拝受される習わしが続いている。

 この京都・伏見稲荷大社をはじめ大阪の玉造、愛知県の豊川稲荷、また神戸の摩耶参など、各地の稲荷神社でも盛大に祭りが執り行われる。

 お稲荷さん(稲荷神)の信仰は、農耕を司る倉稲魂神(うがのみたまのかみ~宇迦之御霊神とも表記)を祀って五穀豊穣や福徳を祈願するものだが、キツネを稲荷神の使いとして油揚げを供えたり、初午団子などを作る風習もある。江戸時代には最も盛んな信仰となり、俗に数が多くて目につくものを「火事、喧嘩、伊勢屋、稲荷に犬の糞」などと皮肉ったりもされた。(※注1)

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1) 『山城国風土記逸文』「伊奈利社」条に「深草の長者・餅の的・白鳥飛翔、稲穂の結実」が稲荷神社(現伏見稲荷大社)の創建と語られている(和銅四年、七一一年と伝承されている)。

 都が山城(京都)へ移り、平安時代に入るとと、稲荷信仰が盛んになり、初午詣の様子は、『大鏡』や『貫之集』(紀貫之)、『枕草子』、『今昔物語』に語られ、当日の稲荷山での賑わいが手に取るように読みとれる。この頃より、稲荷信仰が地方へ伝わり始める。

 それに伴い、初午の日に、稲荷神のご鎮座を讃えて、幸せを得ようとする(農業者は豊作を、商業者は生業繁栄を祈願する)傾向は、徐々に定着していく。また、朝廷よりの奉幣記録も多く伝わり、朝廷が豊作を祈願することは、天下泰平に関わることとして重要な意味を持っていた。こうして初午は、稲荷大神のご鎮座を讃え、その徳に預かろうとする人々の、歴史の長い春の一大行事であったのである。

 全国の稲荷社の総本社、伏見稲荷大社では、初午の二日前の辰の日に稲荷山の杉と椎の枝で作った「青山飾り」をご本殿以下摂末社に飾り、当日には参拝者に「験(しるし)の杉」を授与する習わしがある。




スサノヲ(スサノオ)


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2月5日は初午(はつうま)の日
初午の日に、いなり寿司 【 WEB2.0的生活 】at 2007年02月06日 01:09
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