◆成人式の神話的元型、大国主の試練(ニ)
※神話の成年式(二)
二段目の試練とは何か? 母の力により死から再生したオホナムヂ(大穴牟遅)はその後、スサノオ命(須佐之男命)のいる地下界(根之堅州国)に逃れ、将来の妻となるスサノオ命(須佐之男命)の娘・スセリ姫(須勢理毘売)と出会う。
しかしそこでも待っていたのは、スサノオ命(須佐之男命)による四つの試練であった。初めての夜は蛇のいる室(ムロ)に寝かされ、次の夜にはムカデと蜂がいる室に寝かされる。この2度の難局は妻となるスセリ姫(須勢理毘売)から渡されたヒレ(比禮)の力で切り抜ける。
すると今度は、オホナムヂ(大穴牟遅)はスサノオ命(須佐之男命)から、野原に打ち込んだナリカブラ(鳴鏑)という矢を探せと命じられるが、その背後から火が放たれる。そこにネズミ(根棲み)が登場し、教えられるままに穴の中に隠れて、この試練も見事成就する。
最後の試練では、やまたの大室と呼ばれる所でスサノオ命(須佐之男命)の髪の毛に棲むシラミを取れと命じられるが、よく見るとこれが実はムカデであった。スセリ姫(須勢理毘売)の知恵(椋の実と赤土でムカデを退治する)でこの難局もついに切り抜る。
オホナムヂ(大穴牟遅)は、スセリ姫(須勢理毘売)とともに逃げることになる。夜、スサノオ命(須佐之男命)が眠りこけている間に髪の毛を一握りずつ柱にくくりつけて、入り口の戸の前に大きな石を置いて逃げる。
その時、スサノオ命(須佐之男命)のもつ、権力の象徴である宝物のイクタチ(生大刀)、イクユミヤ(生弓矢)、アメノノリゴト(天詔琴)を奪い、地下界(根之堅州国)を脱出する。
これに気づいたスサノオ命(須佐之男命)はヨモツヒラサカ(黄泉比良坂)まで追ってくるのだが、ここで諦めてオホナムヂ(大穴牟遅)に「大国主」の名を命名し、二人を祝福するのである。
スサノオ命(須佐之男命)がオホナムヂ(大穴牟遅)に言い放った言葉である。「その汝が持てる生太刀・生弓矢をもちて、汝が庶兄弟は坂の御尾に追ひ伏せ、また河の瀬に追ひ撥ひて、おれ大国主神となり、また宇津都志国主神となりて、その我が女須世理毘売を嫡妻として、宇迦の山の山本に、底つ石根に宮柱ふとしり、高天原に氷椽たかしりて居れ。この奴。」
このスサノオ命(須佐之男命)が仕掛けた試練である「成年式」を経て、青年神オホナムヂは大人神である大国主となり、そこで出会った妻・スセリ姫(須勢理毘売)と結ばれることで、神聖王の条件である(大人の条件でもある)「豊穣さ」を獲得することになるのである。
また、そこで得た神宝によって豊葦原中国の国造りを進めるのである。イクタチ(生大刀)、イクユミヤ(生弓矢)は武力権力の象徴を表すが、アメノノリゴト(天詔琴)は宗教的権威のしるしである。
スサノヲ (スサノオ)
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◆2012年 古事記編纂1300年記念
「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに なみだこぼるる」
この言葉は、仏僧であった西行法師が伊勢神宮を参拝した際に詠んだとされる歌である。
自然崇拝を起源とする日本の神々は、目には見えない。
しかし八百万の神々は、神話の時代から今日に至るまで、時代とともに変化しながらも、さまざまな思想や宗教と宗教などと習合しながら、常に日本人の心に生き続けてきた。
2012年、現存する中では最古の歴史書「古事記(こじき・ふることぶみ)」が1300年を迎える。この「古事記」という書物には「国土の誕生について」「日本の神々について」「日本の歴史について」、「日本」と「日本人」のこの国のすべてのことが古代の人々の感性で語られている。
また、日本全国の神社で祀られてる「アマテラス」「スサノヲ」「オオクヌシ」などの神々の物語である「天の岩屋戸開き」「八岐大蛇退治」「稲葉の素兎」などがいきいきと描かれているのだ。
古代の人々が心に描いた世界観である「八百万の神々が今も生きる日の本の国の神々のものがたり」を知ることで、今一度「日本」と「日本人」のことを真剣に考えてみよう。いや、エンターテイメントとしても大変に面白い物語だ。この記念すべき年を機会に、ぜひ読んでみよう。
スサノヲ (スサノオ)
◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(四)
◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(三)
◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(二)
◆成人式の神話的元型、大国主の試練(一)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(四)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(三)
◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(三)
◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(二)
◆成人式の神話的元型、大国主の試練(一)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(四)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(三)