◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(三)
正月元旦の前日、つまり大晦日の夜を除夜という。実は古くから、この除夜から元旦(元旦の「旦」は地平線に日が昇った状態を表した文字なので、元旦は元日の朝あるいは午前中を意味し、歳朝=さいちょう、大旦=おおあしたとも呼んだ)にかけては寝てはいけないといわれてきた。
なぜなら、正子(しょうし、夜の十二時)を過ぎたら、村の鎮守に参詣して実り豊かな新年を祈願するのが慣わしであったからである。
それが、共同体や神社の発展とともに、初詣という「行事」として根付き、今日に至っているようである。(※注1・2・3)
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1) 正月の準備は十二月から始まる。「煤払い」や「門松迎え」「餅搗き」「年神棚」を設えたり、「おせち料理」の下ごしらえをするなど様々な準備をして年越しの夜を迎える。これが大晦日である。
古くは日が暮れるのが一日の終わりと考えられていたので、正月の歳神(年神)祭りは大晦日の夕刻から始まるとされていた。
身体を洗い清め、年神への供物をし、家族揃ってお節料理を食し、寝ることを忌しんで歳神(年神)を迎え神人交歓するのある。
早朝には年男が汲んだ「若水」で洗顔したり、またお茶を入れ、雑煮を作って飲食し新たな年を祝う。また歳神(年神)に供えた餅の一部を年長者から家族に分配する。
これが「年玉」であり、神の霊が籠もっているという。そして皆そろって一つ年を重ねるとされた。古くはこうして囲炉裏を囲んで家族揃ってお正月を迎えたのである。
(※注2) 大晦日は十二月の晦日のことで、一年の最後にあたるため大晦日と呼ばれている。「年越し」「年取り」「大年」「大つごもり」「おもっせい」とも呼ばれている。
年越しのための様々な行事が各地で行われる。大晦日の食事は地域によって様々な伝承があり、この日の夜の食事が特別なものとされていたことが窺える。
魚を用いた食事が多いようである。そばやうどんを食べる習慣は各地で見られ、 「年越しそば」とか「晦(つごもり)そば」と呼ばれている。そばには長いものを食べると長命になるという縁起担ぎの意もこめられている。
また除夜は「除歳」「除夕」とも呼ばれる。旧年を除く意味で、大晦日の夜のことをいう。歳神(年神)を迎えるため、夜を徹する風習もある。
寺では、百八つの除夜の鐘が撞かれる。「百八つ」は人間の煩悩の数だとされ、除夜の鐘はこの煩悩を消し去るのだそうだ。しんと静まり返った夜半に響く鐘の音は、来る年への新たな決意とともに、身のひきしまる思いがする。
(※注3) 初詣は除夜の鐘が鳴り終わってから元日に土地の氏神や神社仏閣に参詣することをいうが、元日に限らず松の内に年が明けてからはじめて参詣することをいう場合もある。
古くは一日の終わりが日没と考えられていたので、一年の終わりは大晦日の日没とされていた。大晦日の夜に社殿で徹夜をすることが各地でみられ、これを「年篭り」という。
今日では一日の区切りは夜中の零時になり、そのため大晦日の夜に詣でる「除夜詣」と、年が改まって元日に詣でる「初詣」とが区別されるようになった。
除夜に参詣してのち一度家に帰り、元旦になって再び参詣したり、大晦日の夜から元日になるまで神社にいることを「二年参り」と呼ぶところもあるそうだ。
また若水とは元日の早朝にその年初めて汲む水のことで、「初水」「福水」とも呼ばれている。歳神(年神)に供え、正月の食事の支度や、洗顔にも用いる。
若水を汲むことを「若水迎え」「若水汲み」といい、水道が普及するまでは各地で正月の儀礼の一つとして行われていた。 若水を汲むのは年男の役目とする所が多く、水を汲む場所は掘り井戸だが、井戸が掘られる前は川や泉であった。
スサノヲ (スサノオ)
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