◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(五)
◆◇◆エビス信仰、その信仰コミュニティーの成立過程(3)、市の神から日本の福神の代表へと発展
エビス(ゑびす)神は漁村の漁民が祀る海から寄り来る海の幸をもたらす神(神霊)と考えられていた(日本は周囲を海に囲まれた島国なので、外=海から寄り来る神が豊かさを運んでくるという素朴な信仰観念がありました)。
次第に内陸に広がると、中部地方の農村などでは田の神をエビス(ゑびす)と呼ぶところが出てくる(本来は漁業の大漁をもたらす神であったが、農業の豊作をもたらす神として受け入れられる)。また山の神をエビス(ゑびす)神とする信仰も中世以降にみられる。
漁民や農民にとっての脅威は、自然を司る神の怒りである。それゆえに豊漁や豊作をもたらすよう祀り、共同体社会の守り神として祀ったのである。豊漁や豊作があると、そこに収穫物の取引の市が生まれ人が集り賑わう。エビス(ゑびす)神を市場の守護神として祀る風習も、この時起こってきた。
つまり市場の誕生と町や都市の商業社会の発展だ。しかし、町の商人にとっての最も大きな不安は不景気や破産であり、そのため商売繁盛をもたらすよう祈り、町の商家では商業の守護神として祀ったのである。
その後、中世・近世になって町人文化が花開く京都・大阪・江戸の三都を中心に福神信仰や七福神信仰が広まり庶民の間に定着する。そうした福神のイメージを代表するのが、今日私たちが知る七福神のエビス(ゑびす)様の姿である(満面に笑みをたたえた福相をして、デップリと太り狩衣指貫=かりぎぬゆびぬきに風折烏帽子=かざおりえぼしを被り、鯛を抱え釣竿を肩にかけた姿)。
このように祀る共同体社会(コミュニティー、漁村・農村・町=都市)の性格によってかなりの相違のある神といえる(本質は豊漁や豊作・豊かさなどの福をもたらしてくれる神で、幸福を希求する日本人の民俗性から生み出された独自の信仰なのである)。
エビス(ゑびす)講というこの神を祭る行事も、日取り・行事の形態などが土地や共同体社会によって一定していない。町中では十二月二十日に行う所が多いようだが、農村では神無月の十月に行い、二股大根などを供える所が多い。
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注) 海辺の漁村では豊漁があると、人は集り賑わい市が誕生した。本来漁村の豊漁の神であったエビス(ゑびす)神も市場の守護神として祀る風習が後に起こってくる。その市には、傀儡子(くぐつし、戎舞わし)や人形芝居など神に奉納する類の芸能が発展してくる。西宮神社周辺も傀儡子の発祥地としてよく知られている。
この芸能や商売の発展によって人の交流も盛んになっていく。すなわち、人があちこちら散らばることによって、信仰が広まっていくのである。古い文献を見ると、乾元元年(一三〇二年)、奈良の南の市を開く時、恵比寿神社を祀ったという記録がある。建長五年(一二五四年)、鎌倉の鶴が丘八幡宮に、やはり市の神としてエビス(ゑびす)神を、奉祀したという記録もある。
このようにエビス(ゑびす)神は、鎌倉時代の頃から「市の神」「市場の守護神」として祭られるようになり、商業の発展にともなって次第に商売の守り神としての信仰を獲得するようになっていった。その中心になったのが兵庫県西宮市の西宮神社で、エビス(ゑびす)神を福神信仰として全国的に広める役割を果たしていった。
また島根県の美保神社では、元々は天神を祀っていたが、文化十年(一八一三年)にエビス(ゑびす)神になぞらえられる事代主神が登場する。事代主が一般的になるのはこの頃ではないかと考えられている。この頃にエビス(ゑびす)信仰が広まっていったようだ。
(※注) エビス(ゑびす)神は、本来漁村で「海の神」として信仰されたものだ。エビス(ゑびす)信仰の総本山である兵庫県の西宮神社が、広田神社の摂社であったのが民衆によって盛り立てられ隆盛を極める。元々はローカルな漁村の漁民の神であったものが、今やもっともホピュラーな神であるエビス(ゑびす)神となるのである。
神話学者の松前健氏は『日本の神々』において日本の神はローカル性があり、それが『記・紀』神話に取り入れられたのではとの見解を示している。また、柳田国男が「百姓えびす」について言及しているように、エビス(ゑびす)神は海だけでなく山においても祀られている。
スサノヲ (スサノオ)
◆神社魅力プロデューサー
http://www.ustream.tv/recorded/19336205
◆スサノヲのブログ
http://www.susanowo.com/
◆日本の神話と古代史と日本文化(mixi)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=508139
◆スサノヲとニギハヤヒの日本学 (livedoor)
http://blog.livedoor.jp/susanowo/
◆地域を幸せにするWebプロデューサー
https://www.facebook.com/susanowo8
◆神社魅力発信プロデュース「神社Web制作工房」
http://jinjaweb.com/
◆2012年 古事記編纂1300年記念
「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに なみだこぼるる」
この言葉は、仏僧であった西行法師が伊勢神宮を参拝した際に詠んだとされる歌である。
自然崇拝を起源とする日本の神々は、目には見えない。
しかし八百万の神々は、神話の時代から今日に至るまで、時代とともに変化しながらも、さまざまな思想や宗教と宗教などと習合しながら、常に日本人の心に生き続けてきた。
2012年、現存する中では最古の歴史書「古事記(こじき・ふることぶみ)」が1300年を迎える。この「古事記」という書物には「国土の誕生について」「日本の神々について」「日本の歴史について」、「日本」と「日本人」のこの国のすべてのことが古代の人々の感性で語られている。
また、日本全国の神社で祀られてる「アマテラス」「スサノヲ」「オオクヌシ」などの神々の物語である「天の岩屋戸開き」「八岐大蛇退治」「稲葉の素兎」などがいきいきと描かれているのだ。
古代の人々が心に描いた世界観である「八百万の神々が今も生きる日の本の国の神々のものがたり」を知ることで、今一度「日本」と「日本人」のことを真剣に考えてみよう。いや、エンターテイメントとしても大変に面白い物語だ。この記念すべき年を機会に、ぜひ読んでみよう。
スサノヲ (スサノオ)
【出雲学】神在月と神在祭、古代出雲王国の謎(一)
◆日本の神々の世界(八百万の神々)と神祭り
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(四)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(三)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(一)
◆日本の神々の世界(八百万の神々)と神祭り
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(四)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(三)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(一)