◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)

2012年01月09日

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 22:01 │Comments( 0 ) 祭りに見る日本文化考
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)


◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)

◆◇◆エビス(ゑびす・夷・戎・蛭子・恵比須)神、ヒルコ(水蛭子・蛭児)とコトシロヌシ(事代主命)

 エビス(ゑびす・夷・戎・蛭子・恵比須)神はいうまでもなく、七福神(商業社会が成立する室町時代、インドや中国の神々を集めた福神信仰が広まる)の一柱として、また商売の神として各地で篤く信仰を集めていた。

 実はこのエビス(ゑびす・夷・戎)は、他の七福神の中でも例外的な存在である。というのも、七福神のほとんどが大陸系(インド・中国)の色合いが濃い神であるのに、エビス(ゑびす・夷・戎、狩衣指貫に風折烏帽子を被り大きな鯛を抱え釣竿を肩にかけた福々しい姿)神だけは複雑な経過を辿り生まれた日本の神だからだ。

 このエビス神(神名には夷・戎・恵比須などが用いられるが、異郷・辺境から来訪して幸をもたらす威力ある荒々しい神を表す。また漁村では広く鯨・鮫・海豚を「ゑびす」と呼んだり、漂流する死体を「ゑびす」と呼んだりして、豊漁の前兆とする信仰がある)にはイザナギ命とイザナミ命の最初の子神であるヒルコと無類の釣り好きというコトシロヌシの二つの顔がある。(※注1・2・3)

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1) 本来は海の彼方から福をもたらす漁業の神、後に商工業の発展に従い商売繁盛の神として庶民に広く信仰されるようになる。毎年一月十日を初戎(十日戎)として百万人の参詣・参拝客で賑わう。

 西宮神社(兵庫県西宮市、福神ゑびす=西宮ゑびすの総本社)の祭神は西宮大神(蛭子大神)を主神として天照大神・須佐之男大神・大国主大神を祀る。

 西宮ゑびすの名が文献に見えるのは平安末期からで、『伊呂波字類抄』に「夷(毘沙門、ゑびす)」(毘沙門とあるのは本地垂迹説によるもの)とあるを初見とする。

 西宮ゑびすには次のような伝承がある。「昔、鳴尾の浦の漁師が夜に武庫の海で網を曳いていると神像のようなものがかかった。漁師はこれを捨ててさらに進み、和田岬の辺りで網を曳くと捨てたはずの神像が再びかかった。そこでこれを持ち帰って家に祀った。

 ある夜の夢に神の信託があり『われは蛭子神(ひるこのかみ)である。国々をまわってここまで来たが、ここより西に適地がある。そこに鎮まりたい』と伝えた。

 漁師はこの夢を里人に話し、神像を輿に載せてこの地に祀ったという。」 つまり西宮ゑびすの起源は、寄り神的な習俗を基とする漁民信仰(海人信仰)の一つであると考えらる。

(※注2) 一つはイザナギ命(伊邪那岐命・伊弉諾尊)とイザナミ命(伊邪那美命・伊弉冉尊)の最初の子神でありながら海に流されヒルコ(水蛭子・蛭児)である(流産児や未熟児を川や海に流した「オカエシ」という古俗の反映か)。

 『源平盛衰記』によると、後にこのヒルコがアメノイワクスブネ(天磐樟船)に乗って摂津国西の浦に漂着し、土地の人々はヒルコを大切に育て夷三郎と呼び、そののち夷三郎・戎大神として祀ったとする伝承(西宮=エビス信仰の総本社の西宮神社には、別の伝承があります)を伝えている。

 海の向うの理想郷=常世の国から訪れるマレビト神・寄神の信仰による。海の恵みや海からの漂着物は神の賜物とされた)を伝えている。このエビス(ゑびす・夷・戎)は豊漁や海上安全の「海の神」、交易・商業の繁栄の「市の神」、商売繁盛をもたらす「福の神」として民衆から圧倒的な信仰を持たれていくのである。

(※注3) そうしてもう一つの顔は、島根県八束郡美保関町の美保神社に祀られてるのオオクニヌシ(大国主命)の子神・コトシロヌシ(事代主命、天孫族の国譲りに際し、抵抗もなく服従し海に身を隠した神)とされている。

 ちなみに、美保神社に祀られるコトシロヌシ(事代主命)としてのエビス(ゑびす・夷・戎)は、左手に鯛を抱え、右手に釣竿を携えた、今見ることのできるエビス(ゑびす・夷・戎)の原形に近い。

 このエビス(ゑびす・夷・戎)は海の神として漁師の信仰の対象になっていた。コトシロヌシ(事代主命)が大漁の神・エビス(ゑびす・夷・戎)とされたのは江戸時代のことのようで、オオクニヌシ(大国主命)の大黒と対をなす祭神は「出雲大社だけでは片参り」と広く信仰された。この二柱の神は、なぜか民衆に熱狂的に崇拝されてきたのである。

スサノヲ (スサノオ)


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◆2012年 古事記編纂1300年記念

「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに なみだこぼるる」

この言葉は、仏僧であった西行法師が伊勢神宮を参拝した際に詠んだとされる歌である。
自然崇拝を起源とする日本の神々は、目には見えない。

しかし八百万の神々は、神話の時代から今日に至るまで、時代とともに変化しながらも、さまざまな思想や宗教と宗教などと習合しながら、常に日本人の心に生き続けてきた。

2012年、現存する中では最古の歴史書「古事記(こじき・ふることぶみ)」が1300年を迎える。この「古事記」という書物には「国土の誕生について」「日本の神々について」「日本の歴史について」、「日本」と「日本人」のこの国のすべてのことが古代の人々の感性で語られている。

また、日本全国の神社で祀られてる「アマテラス」「スサノヲ」「オオクヌシ」などの神々の物語である「天の岩屋戸開き」「八岐大蛇退治」「稲葉の素兎」などがいきいきと描かれているのだ。

古代の人々が心に描いた世界観である「八百万の神々が今も生きる日の本の国の神々のものがたり」を知ることで、今一度「日本」と「日本人」のことを真剣に考えてみよう。いや、エンターテイメントとしても大変に面白い物語だ。この記念すべき年を機会に、ぜひ読んでみよう。

スサノヲ (スサノオ)




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