◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(四)
◆◇◆エビス信仰、その信仰コミュニティーの成立過程(2)、「海の神」「漁民の神」
エビス(ゑびす)神は、今では商人・農民の間に広く信奉されているが、本源(原初的信仰)はやはり「漁民の神」であったといえる。
古くから漁村では、異郷から訪れて豊漁をもたらすものを神(神霊)として信仰する習俗が全国各地にあった(日本固有の「寄り神」「訪人神」の信仰を背景にして、特定の神人群によって流布したものと考えられる)。
地方によっては、鮫や鯨・海豚などのことをエビス(ゑびす)と呼ぶ。これはそれらの鮫・鯨・海豚などに追われて魚群が海辺近くに現れることから、霊力ある神として考えられていたからである。
また、海難者の水死体をエビス(ゑびす)の御神体として祀るところがあったというし、また海中から拾い上げた奇異な形の石をエビス(ゑびす)として御神体としたり、漁網の中央の浮標(うき)をエビス(ゑびす)と呼んだりしているところもある。
こうして見ると、エビス(ゑびす)神は漁村の漁民にとって豊漁をもたらす神霊として信仰されていたということが根本にあったことがわかる。漁の大半が海であることから、「航海の守護神」としての信仰も中世には起こってくる。(※注1・2)
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1) エビス(ゑびす)神は、夷・戎・蛭子・恵比須・恵比寿とも書き、もともと異郷からやってきて、人々に幸福や幸をもたらしてくれる神と信じられ、漁民に深く信仰された。
エビス(ゑびす)神の祠に祀られるのは、必ずしもエビス(ゑびす)の神像や御札だけでなく、浜に打ち寄せられた浮遊物や海中の石などもある。それらはみな海の恵みであり、福をもたらすものだと考えられたからだ。
鯨や鮫・海豚をエビス(ゑびす)と呼んで尊ぶ風習は全国的に存在する。鯨や鮫・海豚には必ず魚群がついてきており、鯨や鮫・海豚が近寄ると大漁をもたらしてくれるからだ。
また、水死体を「エビス(ゑえびす)」といって供養することも全国的な漁村の風習だが、これは葦船で流されたヒルコ(蛭子)神信仰からきたものと考えられるし、死体には魚類が集まるので「福の神」とみなすという考え方と一つになったものとも考えられる。このように漁村で「福の神」として信仰されていたヒルコ(蛭子)神が、農家や商家でも祀られるようになる。
こうした寄り神信仰とは、神来臨信仰の一つで、川海などから漂着し来臨するという観念に基づく信仰である。『文徳実録』斉衡三年(八五六年)十二月条に、常陸国鹿島郡大洗磯前に怪石が海から揚がったので神として祀ったと伝えている。このように御神体の縁起としての寄り神伝説やそれに基づく神事は各地に広くみられる。
民間では漁村のエビス(ゑびす)信仰もそれである。伊豆大島や新島・神津島のように、キノヒの明神が一定日時に海上から寄り来るのを迎え、厳しい物忌みの下に祭りを行うのも寄り神信仰の特徴を最もよく表している。
寄り神の信仰は、祭りに当たって遥かな海上他界(常世の国、ニライカナイなど)から神を迎えることにあり、その背景には海上他界観の存在したことが推察できる。
(※注2) エビス(ゑびす)信仰の総本山である兵庫県の西宮神社の起源は、寄り神的な考えに基づく漁民信仰の一つと考えられる。古くから漁村では、一定の儀式によって海底のの石を拾い、あるいは漁網の中に入った石や漂流物を拾い上げて祀る風習が近年まで広く行われていた。それは全国の漁民一般に見られるものだが、西宮の辺りにも、海から上がったという神の伝承を持つ所が多くある。
では、西宮神社だけが全国のエビス(ゑびす)社の本家のようにいわれ、後世に見るような隆盛を見るようになったのであろうか。それは西宮神社とゆかりの深い広田神社が、神祇伯を世襲した白川家の最も重要な所領であったことと深く関係している。
元来、西宮の夷社=現在の西宮神社は、旧官幣大社広田神社の末社に過ぎなかったのだが、市の発展と商業の発展によって、商都大坂・堺を中心として、庶民の信仰を集めた。
さらに戎舞わしの下級神人や戎舁き(戎舞わしの傀儡子=くぐつし)が、エビス=ゑびす神の神札と人形を持って諸国を周ったので、その結果、広範囲に布教されていったのである(エビス=ゑびす神は漁師が大漁を祈っていたが、海産物の売買により「市の神」「商売繁栄の神」「福の神」として、広く商家にまで信仰されるようになる)。
スサノヲ (スサノオ)
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◆2012年 古事記編纂1300年記念
「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに なみだこぼるる」
この言葉は、仏僧であった西行法師が伊勢神宮を参拝した際に詠んだとされる歌である。
自然崇拝を起源とする日本の神々は、目には見えない。
しかし八百万の神々は、神話の時代から今日に至るまで、時代とともに変化しながらも、さまざまな思想や宗教と宗教などと習合しながら、常に日本人の心に生き続けてきた。
2012年、現存する中では最古の歴史書「古事記(こじき・ふることぶみ)」が1300年を迎える。この「古事記」という書物には「国土の誕生について」「日本の神々について」「日本の歴史について」、「日本」と「日本人」のこの国のすべてのことが古代の人々の感性で語られている。
また、日本全国の神社で祀られてる「アマテラス」「スサノヲ」「オオクヌシ」などの神々の物語である「天の岩屋戸開き」「八岐大蛇退治」「稲葉の素兎」などがいきいきと描かれているのだ。
古代の人々が心に描いた世界観である「八百万の神々が今も生きる日の本の国の神々のものがたり」を知ることで、今一度「日本」と「日本人」のことを真剣に考えてみよう。いや、エンターテイメントとしても大変に面白い物語だ。この記念すべき年を機会に、ぜひ読んでみよう。
スサノヲ (スサノオ)
【出雲学】神在月と神在祭、古代出雲王国の謎(一)
◆日本の神々の世界(八百万の神々)と神祭り
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(五)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(三)
◆エビス神、信仰コミュニティーの成立(二)
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