
◆出雲神話と高天原神話を繋ぐスサノヲ(八)
◆◇◆出雲系神話と高天原系神話を繋ぐスサノヲ神話:大和の大物主神と大和朝廷(7)
東アジアの照葉樹林帯(※注1)では、採集や狩猟など山や森での営みには必ず山の神の加護を祈っていたようである。例えば、焼畑の造成(森林を伐採・火入れ)に先立っても山の神に供物と祈りを捧げてきたようだし、村の男たちが総出で狩猟に出かけ、獲物の多寡で豊凶を占う儀礼的狩猟の慣行も広くみられる。また、死んだ人の魂が、山の頂上へ上っていくとする宗教的観念があった。
こうした文化は照葉樹林文化(※注2)と呼ばれている。この照葉樹林文化の特色を生み出した生活文化の基層には、山と森への深い信仰があったことを窺い知ることができる。(※注3)
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1)太古の昔、照葉樹林帯は中央アジアのヒマラヤ山脈麓を起点として中国・雲南省、長江以南、台湾を経て南西諸島、日本の南半分に至るまで、帯状に分布していた。
照葉樹林(年間を通して常緑に輝く葉を持つカシ、クス、シイ、クスノキ、タブ、ソテツ、ツバキ類等の常緑広葉樹林)は、温暖で雨に富む湿潤地帯にのみ発生し、森林の蘇生力が非常に強く、いくら樹を切っても自然の状態に戻せば砂漠化せず、やがて常緑の森林に戻る。
昼なお暗い神秘の森の辺に住んだ人々が、心象風景として森の生命の息吹きのなかに、神々の世界を見い出したのである(神の宿る恐ろしい森とは、鬱蒼と樹木の茂る暗闇の照葉樹林の原生林であった。そうした森は、自然本来の生命力を持ち、人間にとっては恐ろしく凶暴なものであったが、神秘的な生命力の宿る神々の坐す森や山であったのである)。
(※注2)照葉樹林文化には、各民族に共通する多くの文化的要素がある。イモ・雑穀・茶の栽培、綿花・柑橘類の栽培、養蚕、漆器の製造、麹を用いた酒・味噌の醸造、豆腐・納豆・餅・な熟れ鮓の製造など多岐にわたる。
またその後、焼き畑農耕や大豆発酵食品のみならず、神話や儀礼・習俗(ハレの日に餅を食べる習慣や歌垣などの生活文化、麹酒は山の神への祈りに欠かせない供物であった)など、精神文化の共通性も知られるようになり、いまや日本の深層文化を形成するものと考えられている。
さらに照葉樹林文化の基盤はイモ・雑穀類を主とする焼き畑農耕であるところから、稲作文化誕生の母胎となった文化であるとする考えもある。
(※注3)照葉樹林文化の特徴を一言でいえば「循環と共生」ということになる。この文化の地帯では、狩猟採集と小規模な栽培を生活の基本としていたため、森や水がもたらす恵みとその再生力に見合った程度の生産活動しかしてこなかったと考えられる。
そして森や水辺の動植物や滝、樹木、岩石等に八百万神の存在を認め、獲り過ぎや行き過ぎた開発は祟りを被る行為として厳しく戒めていたようだ。このような多神教的な信仰形態は地域社会に異文化・異端を受容する風土(寛容さ)を生み、多様な価値観の中で共に調和して生きていこうとする精神が育まれていたと考えられる(共生の精神)。
スサノヲ(スサノオ)
◆アマテラス(天照大神)と伊勢神宮の謎(二)
◆アマテラス(天照大神)と伊勢神宮の謎(一)
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◆2012年『古事記編纂1300年記念』
◆『古事記』、神話のコスモロジー(一)
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