◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(七)

2006年07月16日

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 00:00 │Comments( 0 ) 祭りに見る日本文化考
◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(七)


◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(七)

◆◇◆祇園祭(祇園御霊会)、「駒形稚児」または「久世駒形稚児」

 「お稚児さん」(※注1)(※注2)といえば山鉾巡行の「くじ取らず」である長刀鉾が、しめ縄切りの模様が全国ニュースに流れたりして有名であるが、祇園祭の本来の意味から言えば、神事に欠かせない「お稚児さん」は「久世駒形稚児」である。

 あまり知られて無い「久世駒形稚児」であるが、こちらの「お稚児さん」は長刀鉾の「お稚児さん」より、さらに重要な意味を持つ。旧上久世村(現京都市南区上久世町)から祇園祭の神幸祭と還幸祭に各一名ずつ、二名が選ばれ、白馬に乗って神輿が三基あるうちの一基「中御座」の先導を努める(中御座の神輿の先導をする「お稚児さん」が「久世駒形稚児」である)。

 長刀鉾の「お稚児さん」は十万石の大名と同じ「正五位少将」の位を授かる。俗に「お位もらい」と呼び神の使いとしての資格を得る儀式だ。これは山鉾巡行の際、高い場所から身分の高い人を見下ろすための免罪符という考え方もある。

 ところが「社参の儀(お位もらい)」で八坂神社に参拝する長刀鉾の「お稚児さん」は馬から降りなければならないが、「久世駒形稚児」はまさに神の化身であるから、社参の際も決して馬から降りる事はない。ちなみに神社の境内は古来よりどんな身分の高い人であろうと騎乗が許されていなかった(「皇族下馬」)。

 また、古文書によると「ご神幸の七月十七日に久世の稚児の到着なくば、ご神輿は八坂神社から一歩も動かすことがならぬ。もしこの駒故なくしてお滞りあるときは必ず疫病流行し人々多いに悩む」と記されてる。

(※注1) 今日の祇園祭では、稚児が出るのは長刀鉾と綾傘鉾、および「久世駒方稚児」だけだ。特に長刀鉾の稚児は有名であり、七月十三日の八坂神社への「社参の儀」によって、それまでは普通の男の子が「五位少将」、十万石の大名に相当する位を授かる。

 長刀鉾の稚児は十七日の山鉾巡行で、四条通りに張られた注連縄を華麗な太刀さばきによって切るという大役を担っており、これは山鉾巡行の開始を告げる重要な儀礼として、毎年必ずテレビで放映される場面でもある。

(※注2) そもそも「稚児」とは、祭礼で神霊の依り代となる子ども意味し、神の代役としての重要な立場を担う存在である。稚児は本来は男女の区別はなく、女児が稚児を務める例もあるが、祇園祭では女人禁制が原則であり、特に山鉾巡行自体に女子の参加が禁じられているために、稚児も男児に限られている。

 なお今日でこそ長刀鉾以外のすべての鉾が人形の稚児を乗せるようになったが、かつてはどの鉾にも生き稚児が乗っていた。それがやがて種々の理由から生き稚児を廃して代わりに人形を乗せるようになっていっただ。

 その背景には、稚児は祭りに先立って相当期間、家族から離れて別火で炊いた食事をするなど、厳しい精進潔斎が求められ、また祭り当日は地面に直接足を触れさせないなどの特別な扱いを受けるため、希望者も減り、またその世話にも多大な労力と費用がかかることと、稚児が鉾から落ちて大怪我をしたりするなどの危険をともなうことなどの理由からだそうである。


スサノヲ(スサノオ)


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