◆大祓の儀と大祓の祝詞、スサノヲの謎(五)
◆◇◆民間信仰・伝承におけるスサノヲ命、なぜ宮廷神話・祭式に取り込まれたのか?
『出雲国風土記』には、スサノヲ命(須佐之男命・素盞嗚尊)の説話は、意宇郡安来郷(おうぐんやすきのさと)の国巡りをした話、大原郡佐世郷(させのさと)の佐世の木の葉を髪に挿して踊った話、大原郡御室山(みむろやま)で御室を造った話、飯石郡須佐郷(すさのさと)でこの国は小さい国であるがよき国であると詔りたまいた話などが見える。
さらに、スサノヲ命は七柱の出雲の神々の親神として、出雲の全域の伝承として語られている(延喜以前には、崇拝圏は出雲一円はおろか、隠岐、備後、播磨、紀伊におよび、広範囲にわたる)。
出雲系巫覡の徒の活動により、スサノヲ命のみならず、オホナムチ、スクナヒコナ、アジスキタカヒコネなど出雲系の神々や、そうした出雲系の神々に纏わる伝承(大蛇の人身御供譚、山ノ神の木種播き譚、蓑笠をつけ宿を請う説話(武塔神の説話との共通性)、国作り説話、医療禁厭の法の伝え)が地元の伝承・古俗とも習合し、歌謡や語り部の語りの題材に取り上げられ、地域を越え、氏族を越え、広大な崇拝圏を持ち、民衆に絶大な人気を持って崇拝されていた。
スサノヲ命の『記・紀』神話における巨大さは、スサノヲ命の信仰圏の広さと民間信仰・伝承における人気によるものであり、こうした民間での広い人気ゆえに、朝廷では、スサノヲ命を高天原と出雲の神話世界の両界にまたがる神格と見なし、皇祖神・アマテラスの弟に仕立て上げ、さらにはスサノヲ命を邪霊・魔神とすることにより、朝廷の権威を強調する宮廷神話・祭式に取り込んだとも考えられそうだ
スサノヲ(スサノオ)
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