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◆出雲神話と高天原神話を繋ぐスサノヲ(四)
◆◇◆出雲系神話と高天原系神話を繋ぐスサノヲ神話:大和の大物主神と大和朝廷(3)
縄文土器(蛇体装飾の土器)には、縄文人の世界観(死生観・宇宙観)が表れていそうだ(蛇はシャーマニズムとも深く関係し、シャーマンは自分の霊力を示すために、蛇を手なずけていたようである)。それは、蛇に象徴される死と再生の円環的世界観(森の思想・命の共生と循環)である。
これは森とともに生き、森の永劫の死と再生の循環の中に身を委ねていた縄文人にとって自然な感覚であったと思われる。蛇は死と再生(復活・循環)を繰り返す大地の霊そのものであると考えられていたようなのだ(森が破壊されていくとともに、蛇を神とする世界観は失われ、蛇を邪悪のシンボルとみなされていく)(※注1)。
縄文後期以降になると、縄文土器は、突如として消滅してしまう(おどろおどろしいまでの情念の造形=荒ぶる藝術から、静謐さと単調さの造形=寡黙な職人の工芸へと変化)。
しかし、なぜか神話・説話・民話のなかに再び甦るのである。その例として、『常陸国風土記』に出てくる蛇神・ヤト(夜刀神)、諏訪地方に伝承されていた蛇神・ミシャグジ、出雲系神話のヤマタノオロチ(八俣大蛇)、それと大和・三輪山のオオモノヌシ(大物主神)である。
夜刀神や八俣大蛇は蛇神であり、自然の猛威を神格化した自然神とされ、ともに英雄によって退治される悪神とされている。これは、猛威をふるう縄文の神を弥生人が退治したという説話とも考えることができそうだが…。果たしてどうであろうか?(※注2)。
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1)古代人にとって蛇は、旺盛な生命力・繁殖・豊穰のシンボルとして考えられていたようだ。蛇は古い皮を脱ぎ捨てて脱皮を行う生き物であることから、新しい身体を得て生まれ変わる様子に、古代人は再生・治療・永遠の命を見ていたと考えられる。
蛇信仰にまつわる伝承は多く、夜刀神伝承、ミシャグジ伝承、八俣大蛇伝承、箸墓伝承などがあり、蛇の古語「カカ」から類推すると、鏡(蛇の丸い目)、案山子(蛇をデフォルメ)などは蛇を見立てたものと考えられ、正月の「鏡餅」は蛇がトグロを巻いた形とされ、関西に多い丸餅は蛇の卵の造形であるとも云われている。
ふと身の回りを見渡すと、現在の日本の習俗や行事に蛇の象徴(カミの具象としての蛇)に溢れていることに気付く。時代が下り文明化されていく中で、蛇信仰は表面から姿を消していくが(やがて稲作文化の拡大とともに、蛇信仰は水の神や農耕神の信仰へと変質していく)、蛇信仰そのものは隠された形で脈々と今日まで受け継がれきたのだ(今日に至るまで、隠れた地下水のように脈々と流れ続けて、日本の文化や日本人の精神構造に深く根を下ろしてきたのである)。
(※注2)日本には太古から蛇信仰があったことは知られている(縄文人が蛇に寄せた強烈な思いの源は、生命の根源・強さに対する憧れや希求、生命力と再生力への崇拝、死と再生の循環のシンボル、水と母なる大地への信仰など、それらすべてが凝集して神与のものと考えられ、その象徴が蛇として捉えられたようだ)。
縄文土器の縁や把手に無数の蛇が描かれているし、そもそも縄文の「縄(なわ)」そのものが蛇の表現ではないかとされている(注連縄なども)。全国には山そのものを御神体とした神社も多く、それらを「神奈備山(かんなびやま、神山)」とか「御諸(みもろ)・御室(みむろ)」と呼ぶ。
その代表例が大和の三輪山で、この三輪という名前そのものが蛇がトグロを巻いている姿(円錐形の姿)を表しているとされている。また三輪山の神・オオモノヌシ(大物主神)は古来より蛇神で、水神・雷神であるとされていた。
スサノヲ(スサノオ)


◆出雲神話と高天原神話を繋ぐスサノヲ(三)
◆◇◆出雲系神話と高天原系神話を繋ぐスサノヲ神話:大和の大物主神と大和朝廷(2)
『古事記』に記されているオホゲツヒメのような説話や大祓のような儀礼のなかに、縄文文化の土偶や土器などに見られる宗教的・精神的活動を読み取る学者がいる。土偶は最も一般的な説として、妊婦を表し女性の産む力を大地に感染させて、作物や獲物の豊穣を祈る呪具であったと考えられている(死んだ妊婦の霊を慰撫するとする説もあるが)。
また、ほとんどの土偶が壊れた状態で出土することから、土偶を身代わりに破壊することにより災いや疫病を祓ったのではないかと考えられ、人形(形代)に穢れを移して水に流す神道の祓えに極めて近い儀礼の起源を読み取ることができそうだ(ただ、神道の人形の祓えに発展したかは議論があり、中国から渡ってきた習俗ともされている)。
また、土偶が大地の恵みを司る女神(大地母神)を表現しているとする説もある。土偶の破壊の跡から、殺されることによって人に穀物をもたらしたオホゲツヒメのような女神の説話を思い出すことができる(※注1)。『古事記』に登場するオホゲツヒメ(大気都比売神)は、スサノヲ命(須佐之男命・素盞嗚命)をもてなすために口や尻から食べ物を出したが、汚物を食べさせようしたと誤解され、スサノヲ命に殺されてしまう。
そして、その死体から蚕や稲・栗・小豆・麦・豆が出てきたのだとしている。『日本書紀』ではウケモチ(保食神)で、ツクヨミ命(月夜見尊)に斬殺されたとしている(※注2)。すると、こうしたオホゲツヒメなどの説話は縄文時代の宗教的儀式の名残りなのであろうか。しかし、大地母神的土偶信仰も形代的土偶信仰も弥生時代には継承されず(伏流水のように継承され)、なぜか『記・紀』神話に突然復活したかのように登場する(さなざまな意見もある)。
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1)縄文時代の初期から女性像の土偶が作られており、大地母神の崇拝があったと考えられる。しかし、それが縄文時代中期になると、作った土偶を破片にし、方々の場所に分けて処理していたようだ。当時の人々にとって栽培という行為は、大地である女神の体を害することにより、その死体の破片から毎年、作物が生え出してくるということを意味していた。
弥生時代になると、稲を始めとする五穀が最も大切な作物になり、神話も五穀の始まりを説明するものへと変っていく。それが、『記・紀』に記されているオホゲツヒメやウケモチの説話になったと考えられる。この部分は縄文時代の神話を受け継いでおり、女神の体から生み出された作物は、神話が編纂された当時の農業を反映して、五穀の起源を説明しているようだ。
(注2)ツクヨミ命は、『日本書紀』によると、男の月神で乱暴な神とされる。食物の神・ウケモチ(保食神)を殺し、姉神のアマテラス(天照大神)から「悪しき神なり」と罵られ、それ以来日月は昼と夜で別々に住むようになったと語られている。そのウケモチから粟・稗・稲・麦・大豆・牛・馬・蚕などができたので、アマテラスはこれらで農耕を始め、養蚕を始めさせたという。このようなタイプの説話は、ハイヌウェレ型説話に属し、南方に多く分布する。そして、この殺される神は、しばしば月と同一神とさるか、これと結びつけて考えられる。
スサノヲ(スサノオ)

◆出雲神話と高天原神話を繋ぐスサノヲ(二)
◆◇◆出雲系神話と高天原系神話を繋ぐスサノヲ神話:大和の大物主神と大和朝廷(1)
縄文時代、大和の地では、人々は森林や海川の近くに住み、農耕を知りながらも、狩猟採集を主たる生活手段としていた(縄文文化)。縄文の人々は自分たちの生活を豊かにしたり、また災いをもたらしたりするもの(精霊、霊魂、霊鬼、霊威)を、すべからくカミと見なし、そのカミは恵みと恐れの神(森羅万象、自然には創造と破壊、荒ぶる力と和らぐ力を繰り返す。その自然の摂理の圧倒的な姿の背後に人智を越えた大いなるもの、聖なるものの存在を感じ取るのだ)としていたようである(精霊崇拝・精霊信仰)(※注1)。
原初の三輪山の神もこのようなカミであったと考えられる。大和の御諸である三輪山は、御諸(みもろ)とは御室(みむろ)ともいわれ、神奈備山(かんなびやま、神山)のことだ。正体を蛇神とされる大物主(三輪山の神を、恐ろしき「モノ」=大物主と名付けたのは、大和朝廷の側であり、それは、決して本来的な名ではなかったと考えられる)が棲むというこの山麓は、実は太古からの太陽信仰(朝日信仰)の地でもあったのである。
※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
(※注1)万物にカミなるものが存在するという思想は「アニミズム」と呼ばれていて、世界中のあらゆる民族の文化の古層に確認されている(マナイズム、自然崇拝、死霊崇拝などの原始的な宗教観念も、縄文人の信仰には祖霊信仰の要素があるとも)。確かにアニミズムは近代合理主義とは相容れないものがあるが、現代科学でも解明できない自然界の神秘や、大地震などの災害、眠る時に見る夢や熱狂してトランス状態に陥る人間の心理のなかに見ることができる。
特に、アジアそして日本では近代文明が発達し、合理化が進んでも、習俗や祭りなどの中にアニミズム的な意識が濃厚に残っている。縄文時代は土偶・ストーンサークル・ムラ集団の形などの研究により、アニミズム的な世界(精霊崇拝的な世界)に人々が生きていた時代であるとされているが、縄文時代が過ぎ時代が変わっても、人間の無意識的な古層の中にはその時代の魂(アニミズム的な世界=精霊崇拝的な世界)が今も生き続けているようだ。
スサノヲ(スサノオ)