◆成人式、象徴的な死と再生の通過儀式(二)
◆◇◆成人式とは、試練や困難を克服し内的に成長・変化するための成人への通過儀礼であった
日本人は同年齢の他の国の人と比べると、遥かに精神的に子供っぽいという印象があるとされる。社会に対する問題意識や責任感という点では相当に他の国と遅れているのかもしれない。
ヨーロッパの多くの国では十八歳で成人と見なされ選挙権を得られるが、それだけで彼らが成熟した雰囲気を持つわけではあるまい。日本の社会は本来豊かで多様な体験をする機会を奪われているのではないだろうか。様々な豊かな体験に接する機会を通し、試練や困難に耐える強さや逞しさが現代日本文化に求められているのかもしれない。
古代の人々は、人間的成長には不可欠な試練や困難を、成人儀礼の中において実践してきた。バンジー・ジャンプ(いまでこそレジャーであるが)は、かつてはタヒチなど南太平洋での成人儀礼の一つであった。またマサイの戦士が成人するために一人で獣と戦うともいわれている。
シャーマンの候補者たちは、(この場合成人ではないが)シャーマンになるため、さまざまな方法により、高度な儀式において儀礼的・象徴的・擬似的な死と再生を経ますが、このような場合でも、例えば極寒の中で猟をするなど実際に生命を危険にさらす。つまり人間の成長の段階においては、たとえそれが実際に生命を失う危険であっても、リスクは必要とされていたのである。もし試練がなければ、試練を作り出すことが必要であった。
成人儀礼(成人への通過儀礼)は、このように直接的な体験や強烈な体験を伴う必要があったのである。古代、成人儀礼において、成人になる際に体験するものは、近代的な意味での知識の伝授ということではなく、「神話的事実の直接体験」「宗教的な畏敬と恐怖」を体験することであった。
こうした体験は深くかつ衝撃的なものであり、意識・無意識を含めた人格のまとまりを危険にさらすことにもなりかねない。それゆえ、民俗社会(共同体社会、神話的世界観が社会的に共有されている伝承社会)が儀式という守りの中でその場を提供し、かつその体験を認めることに大きな意味があったのである。
しかし社会構造も価値観も変わってしまった現代の社会(現代文明)では、こうした機能は失われつつある。ですが時代が変わっても、子供から大人へと向かう心的・内的な成長・変化(子供としての心のあり方が、大人としての心のあり方へと質的に大きく成長・変化すること)のテーマは、現代においても一切変わらないのである。
いや、古代よりこの「大人になること」というテーマは現代において重要さを増しているのかもしれない(今日の成人式のような形骸化した儀式では、質的な変化を伴う体験を望むことは出来ないが)。
(※注) 元々、祝日「成人の日」の起源については、終戦間もない一九四六年十一月二十二日に、埼玉県蕨市の青年団長・高橋庄次郎氏が主唱者となり企画した青年祭(会場の蕨第一学校でテントを張り最初のプログラムとして行われたのが「成年式」である。二十歳を迎えた成人者を招いて「今こそ、成年が英知と力を集結し、祖国再建の先駆者として自覚をもって行動すべき時」と激励し、前途を祝しました)が始まりである。目的は敗戦により、落ち込んでいた日本の次代を担う青年達に明るい希望を持たせ励ますことであった。
これが大好評で、蕨市では伝統行事として自分たちの祖国を、この町を平和で住み良い文化の高い町にしようする「成年式」として定着してゆく。蕨市では現在でも、成人の日には「成人式」ではなく「成年式」という名前を以来そのまま使い続けている。
一九四八年、この「成年式」を作家山本有三氏を委員長とする国会文化委員会がモデルにして制定したのが、「成人の日」(小正月の一月十五日を「成人の日」として祝日になりました)である(満二十歳になった男女を、この日から成人とし、選挙権や結婚の自由などの権利が与えられ、社会人としての強い自覚と責任を認識することを求められます)。
「大人になったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝い励ます日」が「国民の祝日に関する法」第二条「成人の日」に関する記述です。「国民の祝日に関する法」は敗戦後の一九四七年に皇室祭祀令が廃止され、一九四八年に新しくできた法律です。平成十二年(二〇〇〇年)より、日曜日と重なることを避けるために、一月十五日の成人の日をハッピーマンデー法に基づき、一月の第二月曜日に改正されました。
スサノヲ (スサノオ)
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◆2012年 古事記編纂1300年記念
「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに なみだこぼるる」
この言葉は、仏僧であった西行法師が伊勢神宮を参拝した際に詠んだとされる歌である。
自然崇拝を起源とする日本の神々は、目には見えない。
しかし八百万の神々は、神話の時代から今日に至るまで、時代とともに変化しながらも、さまざまな思想や宗教と宗教などと習合しながら、常に日本人の心に生き続けてきた。
2012年、現存する中では最古の歴史書「古事記(こじき・ふることぶみ)」が1300年を迎える。この「古事記」という書物には「国土の誕生について」「日本の神々について」「日本の歴史について」、「日本」と「日本人」のこの国のすべてのことが古代の人々の感性で語られている。
また、日本全国の神社で祀られてる「アマテラス」「スサノヲ」「オオクヌシ」などの神々の物語である「天の岩屋戸開き」「八岐大蛇退治」「稲葉の素兎」などがいきいきと描かれているのだ。
古代の人々が心に描いた世界観である「八百万の神々が今も生きる日の本の国の神々のものがたり」を知ることで、今一度「日本」と「日本人」のことを真剣に考えてみよう。いや、エンターテイメントとしても大変に面白い物語だ。この記念すべき年を機会に、ぜひ読んでみよう。
スサノヲ (スサノオ)